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ハゲにまつわる、おかしくも、まじめなお話。カテゴリー、1)~6)の順にお読みください。
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 ハゲの科学的な解明は、確かに進んでいるが、その進捗状況は他の疾患に比べると著しく遅い。
 ハゲたからといって、生命に別状があるわけではないし、痛くて我慢できないわけでもない。円形脱毛になった人でチクチクするという人もいるが、生命、苦痛とは無関係だ。ただ「見てくれ」がよくないだけだ。病気ではないから研究する医者も少ない。優秀な医者はハゲを研究するよりは、生命に直接関わる心臓疾患やガン、脳疾患などの研究に携わる。気鋭溢れる医者なら、人間にとってより切実な病気に取り組む。
 以前は開腹手術をしていた胃潰瘍は、いまでは飲み薬で治るし、虫歯も安易に抜かれずに済むようになった。脳や心臓、ガンの治療、手術は進歩し、早期に対応すれば治る確率は高くなった。それに比べるとハゲの治療は‥。
 円形脱毛症は別にして、男性ハゲは病気ではないから病院に行く人はまずいない。研究しても医者の仕事にはならない。だから置き去りにされてしまう。
 しかし、ハゲのマーケット、毛生え薬のマーケットは大きい。もっとハゲの解明と毛生え薬を研究してもいいはずである。で、なるほどハゲを研究している学者はいるが、ガンや脳、心臓疾患を研究している学者の高い理念に比べると、お金儲けに熱心な人ばかりが目立つ。自由経済の世の中だから仕方ないとはいえハゲラーにとっては辛い。(なかにはハゲラーを救済する、という高い理念をもった学者もいる。念のため)
 ハゲの発生するメカニズムはだいぶ解明されたが、いろいろな要素が複雑に絡み合ってハゲるため、結局のところ「地震はナマズが起こす」程度の説得力しか持っていない。言い過ぎかもしれないが、私にはその程度にしか評価できない。
 地震発生のメカニズムもかなり進んだが、いまだに正確な予想はできない。それと同程度なのがハゲだ。男性ハゲのメカニズムはかなり解明されたが、ハゲを完璧に治す手立てはない。
 地震がナマズなら、ハゲは遺伝、だ。毛根にエネルギーがいきわたらなくなってハゲる、もしくは発毛促進要因と発毛抑制要因のバランスが崩れてハゲる、など有力な説が唱えられているが、だからといって完璧にハゲが治る手段がみつかったわけでない。
 ひと昔まえの毛生え薬に比べたら数段効果のある製品が市販薬として販売されている。これらの毛生え薬は、他の病気で投与した治療薬の副作用として毛が生えて、毛生え薬として転用されたものが多い。つまり、予期せずに毛が生えた副作用を製品化した、偶然の産物なのだ。毛生え薬の特効薬として登場したプロペシアももともとは前立腺の薬である。この薬を投与した患者の中から毛が生えてきて、その効果がわかった、という。
 この種の毛生え薬は、もともと医薬品として開発された薬だけに、他の副作用も懸念され、使用に当っては注意が求められる。で、肝心の効果のほどは、毛生え薬を専門に研究している学者が開発した薬より数段優る。
 今後とも他の治療の副産物として、優れた毛生え薬が生れる偶然の産物にハゲラーは期待しよう。


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